秋めきの乙女たちは…
                 〜789女子高生シリーズ

          *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
           789女子高生設定をお借りしました。
 


10月と言ってもまだまだ前半だからか、
陽が照る中を駆け回ればそれ相応に汗ばむ頃合い。

 「ほら、例年ならば、
  半ばの 何とか流星群を見られるようになる頃に、
  夜半の冷え込みが強くなって。
  そのまま ぐんと秋らしくなってたじゃあないですか。」

観測してたら風邪ひいたなんて話をよく聞いたものと。
襟元がルーズなまま連なる袖には、
側線にやわらかくシャーリングが走っているのが微妙に乙女チック。
そんな今時のカットソーに合わせた、秋色のフレアスカートの裾、
くるんと躍らせつつ振り返り。
赤毛の少女が“だったでしょ?”と人差し指を立てつつ言うのへと、

 「そうだったかなぁ。」

ヘイさんが言ってるのは しし座流星群のことだろけれど、
年によっては もちょっと夏場の、
ふたご座流星群が話題になることもあったし、と。
シフォンだろうか軽やかな素材の、オーバーブラウス風ミニワンピに、
ファー使いがキュートなボレロを重ね、
ボトムにはスリムなシルエットの七分丈スムースデニムという、
今日はどちらかといやマニッシュないで立ちの七郎次が。
確かねぇと思い出しているものか、
白い額を人差し指でつつきつつ、そのように応じた傍らでは、

 「……?」

あんまり過去のことにはこだわらない性分なせいで、
思い出すも何も蓄積がありませんと、
ひょこり、金色の綿毛が載った小首を傾げたのが。
モノトーンのプリントもシックなTシャツをインナーに、
漆黒のセミタイトスカートの裾まで届きそうな丈の、
柔らかそうな素材のジレを羽織ったという恰好の久蔵で。
すっきりとシャープな装いに見えるが、
ショートブーツの足首には、
こちらさんもしっかりと流行のファーが巻き付いており。

  3人揃って、どこのストリート誌の撮影でしょかという

そんな華やいだ印象を振り撒きながら。
普段は通学で降り立つJR駅から颯爽と、
時々は何が可笑しかったか、笑いさざめきつつ、
慣れた道をやって来た彼女らで。
平日の昼間ではあるものの、今日は振替休日だから。

 「やぁっと一山越したってとこでしょか。」
 「そうそう。」
 「………。(頷、頷、頷。)」

先の日曜月曜、体育の日の連休に、
彼女らが通う女学園では、秋の体育祭が華々しくも催され。
本来は休みな筈の土曜に設営準備の最終仕上げ、
日曜には来賓を招いての、
まずはの組体操やらマスゲームやらのご披露と、
一部トラック競技の予選のようなものがあり。
そしてそして、月曜はいよいよの陸上競技会。
全員参加の徒競走やら学園周縁を走るミニ駅伝やら、
クラス対抗の綱引きに玉入れ、
前日に予選があった自由参加の仮装リレーに、
ギャラリーもご参加をの、借り物競走まであって。
そんなこんなでくったり疲れた乙女たちが、
それでもとすぐの翌日には後片付けに登校し。
その翌日の今日、やっとのことでの振替休日をいただいた次第。

 「後片付けした昨日は授業がなかったので、
  昨日と今日とで埋め合わせ完了というのは いささか乱暴ではありますが。」

それでなくとも短縮授業期間を設けた手前、
これ以上の休日を大盤振る舞いも出来ない学校側なのだろという、
いわゆる“大人の事情”が、
理解以上の肌合いで、把握出来てしまうこちらのお3人としましては。
昨日の雑用登校でも、
文句を零すでなくのそれはてきぱきとお仕事をこなし。
そして…例えば、
金の髪を少しほど、その横顔にほつらせても厭わずの黙々と、
楚々と働くしおらしい白百合様の、そんな献身の態度がまた、

 『さすがは白百合のお姉様だわ。』
 『私たちも頑張りましょう。』
 『ええ、頑張りましょう。』

純真なお嬢様がたらの胸へ、
情熱の焔群
(ほむら)を灯したようで。
あとのお二人にしてみても、

 『ああ、紅バラのお姉様。
  お手が傷みますから拭き掃除は私たちが。』

 『ひなげしちゃん、
  高いところは危ないから私たちに任せなさい。』

ただ単に、そのほうが手っ取り早く片付くからと、
無駄口も利かないで黙々と手掛けていただけ。
だっていうのに、
なんて真面目なお姉様だろか、
なんて熱心な働き者だろかとの称賛を受けてのこと、
他の方々の手元にも加速がかかっての、あっと言う間に片付く片付く。

 『…口を酸っぱくして叱咤注意を繰り返すよりも効果的ですわね。』
 『後期はあのお三人に美化委員になっていただこうかしら。』

シスターたちも呆れたほどというから穿ってる。
(苦笑)
そんなこんなで、秋の催し“その一”も片付き、
次に訪のうは 月末の学園祭…という運びなのだが。

 『厄落としです、何かパァッとしたことをいたしませう。』
 『いたしませうって…。』

いきなり旧仮名遣いになられてもと、
顔を見合わせた金髪娘二人の戸惑いをよそに、
赤毛のひなげしさんが やたらと張り切っているものだから。

 『徒競走はグループ内で二等賞でしたのにね。』
 『……チア・フラッグも敢闘賞。』

他の乙女らがリボンや小旗を振るう中、
自分の身体が隠れるほどという、一番大きな旗を振るい。
マスゲームから応援合戦まで、
それは奮戦した、小さいけれど意外に力持ちさんだったひなげしさんへは、
昨年卒業してったお姉様たちを始めとする、
来賓の皆様からも、万雷の拍手が惜しみなく降りそそぎ。
後方支援の裏方さんのリーダーさんや、
街なかでも人気のあったポスターを作った執行部広報の皆様と共に、
特別賞をどうぞと表彰されたほどだったのにね。

  恐らくのきっと

本当は次の催しこそ微妙に気の重い、
誰かさんの過去の“ふるまい”を懐かしむ熟女の集う代物なので。
じっとしていると、ついついムカムカが蓄積してしまう彼女なのに違いなく。

 『…ヘイさんて、案外と悋気深かったのですね。』
 『〜〜〜。(〜〜頷)』

日頃の屈託のない朗らかさはどこへやらというのは、
見ているこちらも痛々しいので。
言って諭すのも逆効果だろうからと、
そこは他人の恋模様だからこその冷静な判断をもってきた七郎次が、

  バンドの総合練習を始める最終週までは、
  ヘイさんの言うこと、出来るだけ訊いてあげましょう、と

そんな提案をこっそり久蔵へ持ちかけたほど。

 『恋する乙女は複雑で、
  やたら怒りっぽくもなれば、
  そこから不意に、
  しおしおと寂しがり屋にもなったりもしますからね。』

 『………。(頷、頷、頷。)』

経験値は少ないものの、
それでも好きな人がいるという身なのは皆同じ。
久蔵とて、生理の重さと同じほど、
兵庫せんせえが上の空だったりすると一緒に振り回されもするので、
恋の病のどうしようもないところには理解も及ぶらしくって。

 「…つか、どういう喩えですか、それ。」
 「???」
 「いや、……うん、まあ。アタシも重いときは辛いですが。」

こらこら、そこの金髪娘さんたち。
(苦笑)
そんなこんなから、振替休日に集合がかかっての、
今から何をするかといやあ、

  ―― モンブランを作りましょう。

春先にロールケーキを作ってからこっち、
ちょみっとご無沙汰しておりましたが。
クリスマスを前に慌てないよう、
お浚いを兼ねてやってみるのもいいんじゃないかと…と。
そんな提案があったのへ、おおそれは楽しそうと、
平八のお言葉に、一も二もなくの賛成の諸手を挙げた残りの二人。

 「栗の甘露煮は、
  ゴロさんがたっくさん作り置きしているのを、
  分けてくれるそうなので。」

今からかかると何分かかるかっていう、
大儀な作業はありませんよと微笑った平八だったけれど。

 “まさか、作り置きを大量に使い切り、困らせようとかいうのでは。”
 “…?”

いやいやそうまで歪んだことをする平八ではなかろう。
そうですよね、
ムカムカするのを紛らわせるためにっていうお菓子作りなんですし。
それのせいだとめげる理由にしていた体育祭が終わってしまい、
いよいよ落ち着けなくなるの、
何とか見せまいとしている健気なお嬢さんですものね、と。
目配せのみという器用なやり取りから転じて、
うんうんと、感慨深げに頷く二人へ、

 「……どしましたか? お二人とも。」
 「え?」
 「…☆」

昨日からこっち、何だか様子が変ですよ、二人して、と。
こっちが案じられていては世話がない。
とはいえ、ホントのところを言う訳にもいかないしで、

 「いえあのっ、
  勘兵衛様は、えと、
  ケーキタイプとタルトタイプとどっちがお好きかなとか。」

七郎次が狼狽えたのに輪を掛けて、久蔵殿までが、

 「兵庫は、あのその、イチゴと栗が大好きだぞっ。」

……もちょっと突発事態には強かったんじゃあなかったか、お二人さん。
(笑)
切羽詰まってしまったせいで、
微妙に勢いづいた物言いを返してしまった彼女らであり。
当然のことながら、

 「…………。」

何だなんだ、何事だと。
ますます状況が判らずにだろ、
キョトンとしてしまったひなげしさんだったものの、

 「…今更 惚気られましてもねぇ。」

小さめの肩をすくめると、何だかなというお顔になって、
進行方向へと向き直ってしまう。

  あああ、惚気だなんて…もしかして却って気を腐させましたかね。
  大丈夫だから落ち着け、シチ…と、
  やっぱりこしょこしょと小声でのやり取りになる気配を、
  その小さなお背
(せな)に感じつつ、

  “久蔵殿までが下手な言い訳するようじゃあ、ねぇ。”

こちらこそ、二人へお顔が見えないのをいいことに、
吹き出したいのを必死でこらえておいでの、
ひなげしさんこと、平八だったりするのであり。
自分が妙に苛ついている原因くらい、
彼女らならば薄々気づいているに違いない。
あの五郎兵衛が行く先々で色目を振り撒くような真似はすまいにとか、
過去の蓄積も記憶にある身で大人げないとか、
窘めようはいくらでもあろうに。
今の身に宿るヲトメ心の、繊細なナイーブさや理不尽さを優先し、
そおっと遠巻きにしつつも離れずにいてくれる、
何とも懐ろの深い優しさよ。

 “これじゃあ、
  ちょっとやそっとで立ち直るのが勿体ないじゃあありませんか♪”

こらこら、ヘイさんたら。
それこそ、そこんところがバレたら叱られちゃうぞ?
(苦笑)


 「ヘイさん、早い。」
 「そちらこそ早く早く。
  のんびりしていちゃあ、出来上がったの今日中に差し入れ出来ませんよ?」


のびやかなお声のやりとりに、
近くの枝にいたものか、パッと飛び立った小鳥があって。
キチイ・チィチィと空気を引っ掻き飛び立つ声を、
秋の陽の中、ついつい眸で追った少女らの横顔を、
金色の風がさわさわと撫でてった、神無月の午後でした。





  〜どさくさ・どっとはらい〜  10.10.13.


  *豊饒と食欲の秋ですし、
   お久し振りにケーキ作りに挑戦していただきました。

   ところで、モンブランのレシピを探していると
   “簡単な作り方”というのも拾えましてね。
   ロッテのカスタードケーキ・ファミリーパックに、
   マロンクリームでデコレートして出来上がりとか。
   一応、真っ当なレシピを探してるときに拾ってしまうと
   おいおいおいと ズッコケてしまうものの、
   (市販のマカロンへ以下同文というのもあったぞ)
   小さいお子さんとのおやつ作りとかなら、
   こういう半ハンドメイドも、なかなかに楽しいのでしょうねvv

 で、探し当てたのでちょみっと参考までに…


tx4-new-ap.gif モンブラン tx4-new-ap.gif

・スポンジ生地
 薄力粉 60g 、卵 3コ 、砂糖 60g 、バニラエッセンス 少々

・マロンクリーム
 栗の甘露煮 80g 、無塩バター 20g 、砂糖 大さじ1
 生クリーム 60ml 、ラム酒 大さじ1/2

・仕上げ用
 アプリコットジャム 50g 、ラム酒 大さじ2 、栗の甘露煮 5コ

・ホイップド・クリーム
 生クリーム 150ml 、砂糖 大さじ1・1/2 、ラム酒 大さじ1


【 スポンジを焼きます 】

 (1)卵は卵白と卵黄に分け、卵白をしっかりと泡立てます。
 (2)砂糖を2〜3回に分けて加え、
   さらに泡立てて卵黄・バニラエッセンスも加えます。
 (3)ふるった小麦粉を加え、サックリと混ぜます。
 (4)紙を敷いたオーブン皿に平らに流し入れ、
   ガス高速オーブンで焼きます。(160℃前後、9〜10分)

【 マロンクリームをつくります 】

 (5)栗はスピードカッターにかけて、すりつぶします。
 (6)バターを柔らかく練り、砂糖、(5)を合わせ、
   生クリーム、ラム酒も加えます。
 (7)直径2mm位の、丸形口金を付けた絞り出し袋に入れます。

【 仕上げます 】

 (8)スポンジから、底の部分の丸形を10個とります。
 (9)スポンジの間にラム酒でのばしたアプリコットジャムをぬり、
   スポンジ、ジャム、スポンジの順に重ねます。
 (10)栗の甘露煮を半分に切ってスポンジの真ん中に置き、
   絞り出し袋に入れたホイップド・クリームを山高に絞ります。
 (11) (7)のマロンクリームをうず巻き状に絞ります。
 (12)栗の甘露煮(ビスタチオやアーモンドスライスでも可)を半分に切って、
   天辺へ載せれば出来上がりvv
 

Sweety サマヘ 素材をお借りしました

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